「仕事を辞めるとボケる」は本当か?早大などがベトナム高齢者2000人超を分析

「退職すると認知機能が衰える」という話を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。7月19日、この通説を検証した研究報告がITmedia NEWSで紹介されました。早稲田大学とベトナムの国民経済大学に所属する研究者らが取り組んだ、退職と認知機能の因果関係を探る研究です。定年後の生き方を考えるうえで、多くの人に関わるテーマといえます。

どんな研究なのか

この研究は、早稲田大学とベトナムの国民経済大学に所属する研究者らが2025年に発表した論文「Does Retirement Improve Cognitive Functioning? Causal Evidence From Vietnam(退職は認知機能を改善するか?ベトナムからの因果的証拠)」で報告されたものです。

タイトルにあるとおり、この研究はベトナムのデータを用いて、退職(リタイア)と認知機能(記憶や思考など、頭の働き)の間にどのような関係があるのかを調べたものと伝えられています。研究の対象となったのは、ベトナムの高齢者2000人超のデータです。

「因果関係」に注目した点がポイント

この研究で注目されるのは、単なる「関連(相関)」ではなく「因果関係」を調べようとした点です。

一般的に「仕事を辞めた人はボケやすい」といったデータがあったとしても、それが「退職が原因で認知機能が下がった」のか、あるいは「もともと体調や認知機能に不安があった人が退職を選んだ」のかは、単純には区別できません。原因と結果を取り違えてしまう可能性があるためです。

論文タイトルが「Causal Evidence(因果的証拠)」と掲げていることから、研究者らはこの原因と結果の関係を丁寧に切り分けようと試みたものとみられます。なお、具体的な分析結果の数値については、今回紹介された情報には含まれていません。

なぜこのテーマが重要なのか

「仕事を辞めるとボケる」という言い回しは、日本を含む多くの社会で語られてきた通説です。定年退職や早期退職を控えた人にとって、退職後の生活が頭の働きにどう影響するのかは、切実な関心事といえるでしょう。

一方で、こうした通説は科学的な根拠が十分に示されないまま広まっているケースもあります。今回のように、実際のデータを用いて因果関係を検証しようとする研究は、感覚的なイメージを事実に基づいて見直すきっかけになると考えられます。

なお、この研究はベトナムのデータを対象としたものであり、文化や社会制度が異なる他国にそのまま当てはまるかどうかは、慎重に見る必要があります。

まとめ

7月19日に紹介された今回の研究は、早稲田大学とベトナムの国民経済大学の研究者らが、ベトナムの高齢者2000人超のデータをもとに退職と認知機能の因果関係を調べたものです。「仕事を辞めるとボケる」という通説を、データに基づいて検証しようとした点が特徴といえます。定年後の過ごし方を考えるうえで、こうした研究の視点を知っておくことは、通勤中の会話のネタとしても役立つのではないでしょうか。