7月5日、テクノロジーが人間の仕事に与える影響をめぐる議論に、新しい視点を投げかける指摘が報じられました。AIと雇用の関係を考えるうえで、これまで語られてきた「定説」を見直すきっかけになりそうです。
これまで語られてきた「ATMの例」
新しい技術が人間の仕事を奪うのかどうかを考えるとき、しばしば引き合いに出されるのが「ATM(現金自動預け払い機)と銀行窓口係」の話です。
一般的に知られてきたのは、「ATMは銀行の窓口係の仕事を奪うと思われたが、実際には窓口係の雇用は減らなかった」という例です。ATMが登場したことで一つの支店を運営するコストが下がり、銀行がより多くの支店を出せるようになった結果、かえって窓口係の人数は維持された――こうした説明が、技術の進歩が必ずしも雇用を減らすとは限らない根拠としてよく使われてきました。
「実際に雇用を減らしたのはiPhone」という指摘
これに対し、ライターのデイヴィッド・オクス氏は異なる見方を示しています。オクス氏によれば、銀行の窓口係の雇用を大きく減らしたのはATMではなく、iPhoneとそれによって広がったモバイルバンキングだったと指摘しています。
スマートフォンの普及によって、利用者は残高照会や振込といった手続きを、店舗に足を運ぶことなく手元の端末で完結できるようになりました。この変化が、窓口を訪れる人そのものを減らし、結果として窓口係の需要を押し下げた、という見立てです。
つまり、ATMが登場した時点ではまだ人が支店で対応する場面が多く残っていたものの、モバイルバンキングの広がりによって「そもそも窓口に行く必要」が薄れていった、という流れが指摘されています。
AIと雇用を考えるうえでの意味
この指摘が注目されるのは、AI(人工知能)が人間の仕事を奪うかどうかという現在の議論に直接つながるからです。
「ATMの例」は、新技術が雇用に与える影響を楽観的にとらえる根拠として使われることがありました。しかし、実際に雇用を減らしたのが別の技術だったとすれば、その教訓の受け取り方も変わってきます。
一つの技術が単独で仕事を奪うのではなく、その後に登場した別の技術との組み合わせや、利用者の行動変化が積み重なって影響が現れる――という複雑さを、この事例は示しているとみられます。
なお、この指摘はあくまでオクス氏個人の見解として伝えられているものであり、雇用の変化には他の要因も関わる可能性があります。
まとめ
- 7月5日、「銀行窓口係を減らしたのはATMではなくiPhoneだった」とする指摘が報じられた
- これまでは「ATMは窓口係の雇用を減らさなかった」という例がよく語られてきた
- ライターのオクス氏は、モバイルバンキングの普及こそが雇用減の主因だと指摘している
- AIと雇用を考えるうえで、技術の影響を単純にとらえないための視点として注目される
技術が仕事に与える影響を語るときの「定番の例」も、見方を変えると別の解釈ができる――そんな気づきを与えてくれる話題です。